幻を愛していた

「人生って何だろう?」 そんな風に疑問に思った14歳の頃から、私は人生とは何なのか、33歳となった今日まで、自分なりに深く考え続けてきた。

その道の途中、私は何度も真実のような物に出会ったが、その度、それらは幻のように消えていった。

そして、また1つ大切にしていたものが幻へと変わった瞬間、私は気がついた。

この世界には真実など1つも無く、私はずっと幻の影を追いかけていたのだと。

しかし、その事に気づいた後も、私の幻に対する愛情は消えなかった。

私は、今までずっと幻を探し、幻を愛し続けていた事に気がついたからだ。

幻とは、実体が無いのに、あるように感じる物の事を指す。

私が世界で一番大好きな人は母親だが、そんなかけがえのない感情ですら、ただ単に私の脳内で何らかの現象が起こっているだけの事であり、つまりは幻なのだと気がついた。

しかし、それを知った後でも、私の母親への愛情は消える事は無かった。

私は、幻を愛しているんだ。

ほんの少しのトラブルで、消えたり、忘れたりしまうような記憶を、私は心から愛し、大切にしている。

お金や土地、身分など、実体がある魅力的なものはたくさんあるけれど、本当に大切なものは全て心の中にある。

たくさんのお金や土地があっても、どんな高い身分に身を置いていても、心がそれに満足出来ていないのであれば、幸せとは言えない。

逆に、それら全てを持たざる者であっても、心から幸せを感じているのであれば、それは幸せな人生だ。

つまり、心が映し出す幻こそが、この世界の全てだ。

実体のある物が無いと嘆いたり、怯えたりする必要はない。

目に映る物にとらわれず、心に映る幻に意識を傾け、深い愛情を注いでいく事こそが、幸せな人生を歩む為にとても重要な事だと私は思う。

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